ひび

子供は海苔が好きだという話はきいていたが、例外にもれずムスメも海苔がとても好きだ。
なんでもかんでも海苔で巻けば食べてくれる時期を過ぎ、巻いてるものをえいえいと振り落として海苔だけ食べるようになったので(ええ むかつきます それなりに)あのぱりぱりとした感触なんかが特に好きなんだろうと思う。
正月過ぎて大分歩けるようになったなあと思っていたら2月末の現在は、もう立派にどこへでもとてとて歩いて行って、ハイハイはほとんどしなくなった。
歩けるようになって、家の中のあまり行った事がなかった台所や脱衣所にいきたくてたまらないらしく、今日もいつのまにか台所へとぺたぺた歩いていく足音がしていた。と、思っていたら 乾物なんかをおいてある棚をぺろっとあけて海苔の入った缶を発見し、
嬉しそうにもってくるではないですか。
さらには開けろ開けて海苔を食わせろと言っているではないですか。
(実際には言葉はまだでないけど、目の前で缶を開けようとしてうーうーわーわー言っているし、缶をこっちに差し出したりしてる)
なんてことだと思った。 なんて育っているのだ。
泣いてばかりの赤くてぬくい生き物だったムスメは
変な言い方だが、確実になんだか人間になってきている。
私は産後死ぬかと思うぐらいきつくて、おまけにムスメはやたらに大声で泣く新生児で毎日毎日自分も泣いていて本当に本当につらかった はずなんだけど、もうその辺りの記憶があいまいになってきている。写真を見ては「こんな顔してたっけ」「この頃どんなことしてたっけ」と思ったりしてる。
それぐらい日々はわりとめまぐるしく過ぎて、今日の海苔を持ってきたムスメもすぐに過去になっていく。
今日見せた笑顔もその一度だけの笑顔で、次に見せる笑い顔は同じなようで違うのだろう。
当たり前のことだけど、目の前にあるその瞬間から物事は過去になっていってもう二度と戻らない。
子供を育てるという事はそういう当たり前だといわれていたことを本当に身体で実感して自分のものにしていく日々という感じだ。
こうやって思ったことも次の瞬間には「3日前のうどんが床に!」とかやっていてすぐに忘れていたりするけれど、何度も何度もそういった場面にでくわしてまた何度も何度も同じことを思って そうやって自分の身体に染み付いていってる感じがする。
子供を育てていなくても 生きてく事ってそういうことなんだろうな。
そうやって日々自分は自分に ムスメはムスメに 相方は相方に
あなたはあなたに なっていくのだと思う。