まぶたの裏に

大安吉日。
無理やりにでも今日引越しすることに決めていた。実家と新居がわりと近いので本当に当座いるものだけ運んで。朝からゆきのすけの検診を終えておかんとお昼ご飯。じゃこの炒飯 おいしかった。式が終ってもやる事は多く、めたくたに荷物をつめていって相方に夜な夜な運んでもらいなんとか片付いた。収納庫の中はまだ冬物や本でぎゅうぎゅうだけど・・
久しぶりにがらんとなった自分の部屋を見て泣けてきた。
目の前のことに一生懸命なりすぎて この大切な時期、いろんなこと、抜け落ちてなかっただろうか。
だけどもう進んで行くしかないのだ。
なぜか2歳くらいまで住んでいたアパートの近くで兄と二人でとった写真がでてきた。
私は1歳くらいだろうか。撮影者はおかんかな。昭和な感じのいい写真だった。
夕方から挨拶もかねて相方が夜ご飯を食べにくる。昨日の事は二人ともふれない。従兄弟達や父と母の結婚式の集合写真などを見て和やかに食事は進む。
おかんが家族で一番初めに住んだあの写真のアパートの話をしていた。私もおぼろげにしかおぼえていないけど2間しかない日のささないアパートだった。
そこに5人で7年住んでお金をためて、借金もして一軒家を買い、さらに今の実家を建てたおとんとおかん。
「私達もそこからはじめて、ここまでになった。あなたたちも頑張りなさい」とおかん。その間の二人にはあたりまえのように「家族をおもってよりよく生きる」という考えがあったのだろうなと思う。その思いをあたりまえのように貫いてきてここまでになったんだろうな。
私にそれができるだろうか。 
お酒の入ったおとんは寝てしまった。
雨の上がっている間に最後の荷物を運ばないといけないので、そろそろ新居へ帰ることに。
おかんは玄関まで見送りに来て 小さく手を振って家の中に入っていった。
それからはもう車の中で号泣。
相方に「お前は幸せだな」といわれる。 へい。その通りです。
あの小さく手を振って家のほうに歩いて行くおかんの姿が目に焼きついている。
きっと私が死ぬときには、さっきのおかんの姿を思い出すんじゃないかとおもった。